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制限行為能力者(基本編その1)*行政書士試験‐民法*

みなさんこんにちは、堂本です。

今回は民法の総則、制限行為能力者基本的な内容についてご紹介します。

 

さて、制限行為能力者と言えば、勉強をスタートしたばかりの受験生が一番初めに勉強する箇所になります。この単元の特徴は以下の通りです。

 

・理解はあまり難しくない

・とはいえ、それぞれの違いが覚えにくく、丸暗記してもすぐに忘れてしまう

・意外と細かい知識まで出題される

 

とこんな感じです。 細かい知識は応用編でご紹介するとして、理解に必要な基本事項をだーっとまとめていくのが今回のコンセプトになります。

1.行為能力とは

 

行為能力とは、単独で有効な法律行為をなす能力のことをいいます。

簡単に言うと、土地を買ったり、金融機関からお金を借りたり、行政書士に仕事を依頼したり、そういうことについて自分で決めて自分でやれる能力のことです。

 

ほとんどの成人にはこの「行為能力」が認められています。

しかし、ここで少し考えてみましょう。

 

例えば子供が一人で車を買う契約をしたり、銀行から何百万借りれたりしてしまうとどうでしょうか。

あるいは認知症の症状がある高齢者の方が、単独で自分の家や土地を売ってしまえるとしたらどうでしょうか。

悪い人に騙されたり、取り返しのつかない間違いをしていまいそうで、「大丈夫?」って心配になりますよね。

 

これらの人は通常の成人に比べて、法律行為をする際の判断能力に不安がある、と民法は考えています。そのため、これらの人々を制限行為能力者という扱いにして、単独では有効な法律行為ができないようにしているのです。

 

「単独ではできない」とはどういうことかというと、制限行為能力者が法律行為をする場合には、原則として保護者の同意を得てしなければならない、ということです。

 

もっとも、これらの人々は保護者の知らないところで勝手に法律行為をしてしまうこともたびたびあります。そのため民法は、制限行為能力者が同意を得ずにした法律行為は取消すことができる、とも定めています。

 

「すみませんうちの子が私たち両親に相談せずに勝手に大きな買い物をしてしまって…モノはお返しするのでお金を返していただけませんか?」

という申し出が認められるってことですね。

 

ポイントをまとめます。

①未成年者や一部の高齢者などは、単独で法律行為ができない場合があり、これらの人々を制限行為能力者と呼ぶ。

 

制限行為能力者が単独でできない法律行為をするには、保護者の同意が必要となる。

 

制限行為能力者が保護者の同意を得ずに法律行為をしてしまった場合、その法律行為は取消すことができる。

これらのポイントは制限行為能力者の単元を理解する上で非常に重要なので、よく頭に入れておきましょう。特に②と③が大切です。単独で出来ないなら同意がいる、同意がなかったのなら取り消せる、という感じです。

 

2.行為能力と似たような概念

ちょっとだけ脱線しますが、行為能力のほかに、権利能力、意思能力なんて言葉も登場することがあります。そこまで重要度は高くありませんが、一応解説しておきましょう。

 

・権利能力

権利義務の主体となる能力。平たく言うと普通に民法などの適用を受ける能力、くらいの意味です。 この権利能力は、生きた人間(自然人)には当然に認められますし、法人にも認められます。

 

行為能力みたいに認められたり認められなかったりということがほとんどないので、あまり問題になることはありません。(胎児については論点あり詳細は応用編)

 

意思能力

自分の行為の結果を予想し理解できる能力です。赤信号を渡ったら車に轢かれるかもしれないとかそういったことを予想できる力のことですね。 こちらは場合にもよりますが、大体7~10歳に認められると考えられています。

(ただし、泥酔してたり意識不明の人には認められない。)

 

意思能力に似た概念で事理弁識能力という概念がありますが、この2つは少し違う概念です。何がどう違うのかは正直私もよくわかっていません。

もっとも、事理弁識能力は不法行為の単元で出てくるくらいで、それ以外で事理弁識能力や意思能力が問題になることはほぼないので、あまり気にしなくても大丈夫です。

 

制限行為能力者には4種類あり、それぞれ性格がけっこう違います。これらの違いがバンバン出題されるわけです。

 

なんでもそうですが、闇雲に覚えるとうまくいきません。違いを覚えるためには逆に似ているところを探したり、覚えやすいようにグループを作ったりすると良いです。順番に紹介していきましょう。

 

・未成年者

20歳未満の自然人(生きた人間)のことをさします。 ちなみに2022年からは成人年齢が18歳になるのですが、2020年に試行される民法の大改正とはまた別なのでご注意ください。

 

成年被後見人

認知症の高齢者などのうち、判断能力がほとんどない人のことです。自分の子供に「初めまして」って言ってしまうくらい、症状が進んでいる人をイメージしてください。

この未成年者と成年被後見人「単独でできること」がとても少ないので、同じグループだと考えましょう。これが記憶のコツです。

 

被保佐人

成年被後見人ほどではないが、かなり認知症の症状が進んでいる人などのことです。 あまりちゃんとした基準はないようですが、一人で買い物に出掛けたら帰ってこれるか不安があるくらいの方を想像しておくと良いでしょう。

 

・被補助人

認知症の症状がやや進み、日常生活に支障を来すくらいの方をイメージすると良いです。制限行為能力者の中で一番判断能力があると考えられており、できることも多いです。

 

ちなみに、制限行為能力者には未成年者以外に、「被」とついていることを意識してください。守って「もらう」くらいの意味です。

4.未成年者の行為能力

 では具体的に、それぞれの制限行為能力者の行為能力の中身を見ていきましょう。

 

未成年者は単独で出来ることはとても少ないです。そのため、出来ることを覚えてしまって、それ以外は単独では出来ないんだなぁと理解するのが一般的です。

ちなみに、

「単独でできない=同意がいる」

これはもう大丈夫でしょうか。よくよく意識して進めてくださいね。

それでは、未成年者が保護者の同意なく、単独で出来ることを挙げていきます。全部で3つあります。

 

・単に権利を得または義務を免れる行為

意外と理解が難しいところです。時々「未成年者が得をすることは単独でやれるってことね!」みたいに単純に考ている人がいますが、そうではありません。

 

ここでいう単に権利を得または義務を免れる行為とは、「一切の支出や失うものがない行為」と理解してください。

 

単に権利を得または義務を免れる行為の例

・金品の贈与を受ける(単にもらうだけなので支出なし)

・借金を帳消しにしてもらう(借金がなくなるだけなので何も失っていない)

・ 遺贈を受ける(これも単にもらうだけ)

 

遺贈ってなに?とか細かいことにこだわる必要は今はありません。法律を勉強しているとよくあることですが、かなり後になって学ぶことが先に出てきたりします。その都度全てを調べて覚えようとすると頭がパンクして飛んでいくので、今は言葉だけ知っておけば大丈夫です。

 

単に権利を得または義務を免れる行為ではない

・1万円のものを5000円に負けてもらって買う(一応支出がある)

・借金や代金の支払い、その他の弁済を受ける(弁性を受けると債権が消滅し、二度と請求できなくなるため、債権を失っていると考える)

・負担つき遺贈を受ける(負担が付いているのでタダではない)

 

弁済ってなに?というのも今はそこまで気にしなくても大丈夫です。なんか支払い的なもののことね、と思っておきましょう。

 

話を戻しますが、単に権利を得または義務を免れる行為については、未成年者単独でできます。何の損もないため、保護者に同意を求めるほどのことではない。ということですね。

 

ちなみにここからさき、同意なく出来る行為は取消すことができない、と知っておいてください。これも非常に重要な事項です。毎回頭の中で繰り返しましょう。

 

法定代理人が処分を許した財産の処分

また知らない言葉が出てきましたが、法定代理人とはこの場合両親のことだと思えば良いです。 そして、法定代理人が処分を許した財産の処分とは、おこづかいを使うことなどです。

 

お年玉で買い物をするときまでいちいち同意が必要となると大変だ、くらいに思っておきましょう。しつこいようですが、この場合もやはり、同意なく出来る法律行為であるため取消すことができません。

 

法定代理人から営業を許された特定の行為

未成年者が営業するなんてイメージつかないぞ、という方はじゃりん子チエちゃんを思い浮かべると良いでしょう。

チエちゃんは親が経営する(しているかは怪しいが)ホルモン屋さんでお客さんに酒を注いだりホルモン焼きを提供したりして店を切り盛りしています。

 

この場合、チエちゃんお客さんに物を売ったりサービスを提供したりしてお金をもらっているわけなので明らかに法律行為なのですが、お酒を一杯提供するたびに親に同意を得るなんて出来るわけがありません。そんなわけで、営業を許された行為の範囲内では、いちいち同意を得なくても、単独で法律行為ができるよ、ということを民法が定めてくれているわけですね。

 

ちなみに、営業の許可は、業務の全般に対してしかすることができません。もし親が未成年者に営業を許可する場合、八百屋なら八百屋、ホルモン屋ならホルモン屋の全ての業務につき許可をしなければならず、一部だけ許可することはできないとされています。たとえばキャベツを売るのは良いけどにんじんはダメとか、酒はついでいいけどホルモン焼きは提供しちゃだめとかは認められていない、ということですね。(ややこしくなるから)

 

それではここまでのまとめです。

①未成年者はほとんどの法律行為について親の同意が必要(仮に同意を得ずにされた場合は取り消しができる)

 

②例外的に同意が不要なのは以下の3つである。

単に権利を得または義務を免れる行為(一切の支出や失うものがない行為)

法定代理人が処分を許した財産の処分(おこづかいを使うこと)

法定代理人から営業を許された特定の行為(親の店の手伝い)

 

制限行為能力者が同意を得ずに単独でした法律行為は取消しができない

 

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判断能力がほとんどないくらいに認知症が進んでいる高齢者などです。

こちらも未成年者と同じように、出来ることの方が少ないため、何が出来るかを覚えてしまい、あとは全部できないと考えましょう。

 

とはいえ、未成年者の場合よりもだいぶ理解は簡単です。詳しく見ていきましょう。

 

成年被後見人が単独で出来る法律行為

日用品の購入その他日常生活に関する行為だけです。未成年者の場合は3つありましたが、成年被後見人には1つしかありません。

 

生活に必要なもの、たとえば食べ物とか歯ブラシとかの買い物は単独で出来るということです。逆に言えば、成年被後見人が出来るのはそれだけということになります。

さて、察しの良い方は「じゃあそれ以外の法律行為はすべて保護者の許可がいるのね?」と理解してくださるかもしれません。しかし、実は違います。成年被後見人は日用品の購入等を除いては、たとえ保護者の同意があったとしても単独で法律行為をすることができないのです。同意はあってもなくても同じ、まったく無意味ということになります。

 

成年被後見人は判断能力がほとんどないと考えられているため、同意があったとしても単独で法律行為はできない(同意があっても取り消しができる)ということです。

 

え?じゃあ物を買ったりしたい場合はどうしたらいいの?全部単独でできないなら方法がないんじゃない?と思われるでしょうが、成年被後見人の保護者には代理権というものがあります。こちらは次回解説しますが、つまりはすべて代わりにやってもらうのが基本になります。

 

繰り返しになりますが、仮に同意があっても単独でできないというところが他の制限行為能力者と決定的に違うところなので、注意してください。

仮に成年被後見人が勝手に法律行為をしてしまった場合は取消しができるということですね。

 

それではまとめです。

成年被後見人保護者の同意があったとしても単独で法律行為ができない(同意を得てした場合であっても取り消せる)

 

②例外的に日用品の購入や生活に必要な行為はできる。成年被後見人が単独で出来るのはこれだけ

 

6.被保佐人と被補助人

さて、ここから先の被保佐人と被補助人は、逆に多くの法律行為を同意なく、単独で行うことが可能です。そのため、出来ないことを覚えてしまった方が早いです。しかも被保佐人と被補助人は、この出来ないことが非常によく似ています。そんなわけでまとめて書いていきます。

 

被保佐人が単独で出来ないこと(同意が必要なこと)

13条1項所定の行為

 

・被補助人が単独で出来ないこと(同意が必要なこと)

13条1項所定の行為の一部

 

お分かりでしょうか、13条1項の全てにつき同意が必要なのが被保佐人、全てではなく一部だけ同意が必要なのが被補助人ということです。ちなみにこの場合の「一部」が何かというのは、保護者が裁判所と相談して決めることができます。

13条1項に何が書いてあるかはすべてを覚える必要はありません。私も全然覚えていませんでした。簡単に言ってしまえば家を買うとか、大きな借金をするとか、重要な法律行為がいくつか書かれてあります。(細かいことは応用編にて)

 

被保佐人とか被補助人というのは制限行為能力者の中でも判断能力が比較的高いと考えられているため、特に重要な法律行為のみ同意が必要とし、あとは単独で出来ることになっているのです。

 

ちなみに、被補助人については、13条1項の所定の行為のうち、すべてを保護者の同意なく、単独で出来る、としてしまうことも可能です。この場合被補助人は通常の成人とほぼ同等の扱いとなります。(まったく同じにはなりません、詳細は次回)

 

では逆に、被補助人につき13条1項所定の行為すべてにつき「同意が必要」と定めてしまうことは可能でしょうか。

 

答えは不可能です。それなら被保佐人とまったく同じになってしまい、初めから被保佐人と扱うのが適切だからです。

 

逆に被保佐人については、13条1項所定の行為以外についても、同意が必要と定めることもできます。何につき同意が必要と定めるかは保護者が裁判所と相談して決めることなので、ある程度自由に定めることができます。

 

それではまとめです。

被保佐人13条1項所定の行為につき、保護者の同意が必要。

 

被保佐人について、これら以外に同意が必要な行為を追加することもできる。

 

③被補助人は、13条1項所定の行為のうち一部につき、保護者の同意が必要。

 

④被補助人について、これらの行為の全てを単独で行えるようにすることもできる。

 

 

次回は保護者の権限や種類、それ以外の事項についてお話しします。